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自動車整備士の日々の作業風景、本音等々… 整備士の日常をその視点から徒然なるままに綴る日々の記録。
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エンジンオイルがどのように外に漏れないようになってるのか、
疑問に思ったことはないでしょうか?…

クランクシャフトがエンジン内から外に出てるからには当然オイルが漏れない
構造になってる訳で…これはエンジンに関わらず、自動車の構成部品には大抵
オイルシール、ダストシールと言われる物が付いています。

このオイルシールが劣化、摩耗する事によってオイル漏れが発生し、
酷くなると全く機能せずに、ベアリング、ギア等の焼き付きに至る訳です。

(左はフロントデフのサイドシール。右はオペルのカムシャフトシール。)
DCF_0067.JPGDCF_0084.JPG

実はこのシール、オイル装填部分に限らず、ホイールベアリングが入っている
いわゆるハブという部分にもグリースの漏れ防止、ダストの進入防止の為に
使われています。共通してることは回転するシャフト等の出口にあるということです。

では、どういう部品かと言うと、極めてシンプルでこれでいいの?と思うほど
単純な作りになっています。

(画像はトランスファーオイルシール。イラストはオイルシールの断面図)
画像をクリックすると、拡大します。
DCF_0107.JPG 19a95074.jpeg01c1aa22.jpeg
回転するシャフトにシールが線で接しているだけの単純な構造です。
線で接してるから漏れないのでしょうね。摩耗が進むと線ではなく面になり、
オイルを切る作用が無くなり、漏れに至ります。

或は劣化すると、ゴムで出来てるので硬くなり、ヒビが入りそこから漏れて来ます。
いわゆる経年劣化と言うやつです。

(イラストはオイルシールの装着断面図。画像はドライブシャフトにシールが
こんな感じで当たってることを示すもの。実際にはミッションに打ち込まれている。)
68a28586.JPG               DCF_0109.JPG
シャフトとは異なりますが、エンジンのバルブシールも同じ構造です。
これも摩耗、経年劣化でオイルが漏れて、いわゆるオイル下がりを招きます。
このシールは他のシールと違い完全に漏れを防ぐというより、漏れ難くする
といった程度でしょうか、ある程度の漏れはバルブとガイドの潤滑に作用する
ので問題無いようです。

交換方法は簡単と言えば簡単なのですが、問題は新しいシールの
打ち込みと、その為のスペースの確保でしょうか。

エンジンの部位によっては、打ち込む為のスペースが無い為、
エンジン本体を降ろしたり、ミッションを降ろしたりと、手が掛かります。
ドライブシャフトのオイルシールなら、ドライブシャフトを外さなければなりません。

スペースの確保が出来れば、シールを抜きます。シールの大きさに合った
ドライバー、レバー等で煽って抜くのもいいですが、シャフトを傷付けないよう
注意しなければなりません。難しい場合はシール自体を壊して取ります。
見た目はゴムですが、中は金属で出来ています。先の尖ったドライバー等
で、穴を空けその穴を利用してこじって取るか、シールを変形させると取れて
来ます。

(画像はフロント右、ドライブシャフトが挿入されてるトランスファーオイルシール
 を、ドライバーで煽って外してる場面。シールの奥にあるのはベアリング)

    DCF_0112.JPG            DCF_0111.JPG
打ち込みは慎重に少しずつ行います。シールと同じサイズのボックスレンチが
あればそれを当ててハンマーで少しずつ叩いて打ち込みます。
同じサイズのものが無い場合は直接叩いてもいいのですが、シールを変形させ
ないように打ち込むには、ある程度の経験が要求されます。
打ち込み過ぎ、或は打ち込み不足がないように注意します。
取付面に平行になるように慎重に調整しながら打ち込んで行きます。
    
   
この際注意しなければならないのは、シールの外周を叩いて打ち込むことです。
内側を叩くと簡単に変形してしまうので注意しなければなりません。
変形させたり歪んだ状態ではオイル漏れの原因になるので、失敗した場合は
再度交換します。

最近ではシールとシャフトの当たり面にグリースが塗布されてる物が多いようです
何も塗布されてないものはグリース、またはオイル等を塗布して初期摩耗を
防止します。

交換が上手く出来たら実際にシャフトを回転させて、オイル漏れが無い事を確認
します。勿論、場所によっては直接目視による漏れの点検が出来ない箇所もありますが
1時間程走行してみて漏れが無いようなら大丈夫と判断し、念のため期間を決めて
何度か見るようにするのがいいでしょう。

(シールの打ち込みが終わり、ドライブシャフトを装着した画像)

    DCF_0113.JPG
例外としてこんな事例もあります。
オイルシールに金属のシャフトが負けて、線接触された部分が削られて段付
摩耗する場合があります。
このような場合本来ならシャフトの交換、又は修正が必要なのですが、
シールの位置を僅かにずらして打ち込む事で、段付部にシールが当たらない
ようにする事でオイル漏れを防ぐ事が出来ます。
(イラストは段付部を避け、浅めに打ち込んだシールの断面図)
aef3ed8a.jpeg
但し、シールが薄く勘合部が浅い場合などは、シールが抜けないよう
工夫が必要になる場合もあります。

全ての部分に共通する事は、シャフトに傷やガタが無い事を確認し、
大きな傷やガタがある場合は先にそれから直す必要があるという事です。

実はこの画像、2週間程前にオイル漏れで一度交換したオイルシールですが、
漏れが止まってないとの事で再入庫した際の画像です。

単にシールの劣化だと決め付けて交換した為に、シャフト側の小さな傷を
見落としてしまった為に再び漏れたようです。

シャフトの傷は僅かに2ミリ程のものでしたが、丁度シールが当たる部分を
またぐように斜めに入った傷でした…ただ、結構深いのが災いしたようで、
漏れは酷くないものの、雫が垂れてる状態でした。

このような失敗は初心に戻るいい経験で、肝心なのは二度と同じミスをしない
という事なのでしょうね…お客様には申し訳ない気持ちで一杯ですが、
原因がハッキリした事で整備士の本音としてはホッとしています…

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プロフィール
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Mr. Blue (ミスターブルー)
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男性
職業:
自動車整備士
趣味:
PC、釣り、音楽鑑賞、ドライブ
自己紹介:
整備士歴20年を超えましたが、
常に修行の日々なのですね。
これでいいと言うレベルは無くて
経験も全て過去の物になります。
失敗から学ぶ事も多く正反対
の事が正しかったりする世界です。
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