恩師とオペル…（Ⅲ）

恩師との出会いは、28年前の高校進学時に遡る。
工業高校と言う事で、ほぼ男子校のようなものだった…色気も何もあったものでは無く、暗くピリピリした雰囲気が漂い、選択を誤ったのではないかと、暫く落ち込んだのを覚えている。が、しかし、そこは住めば都…女子がいないのはそれはそれで、気楽と言うものだ…

変に気取る事も無く、男臭さの中に身を置けば、自然と仲間意識が芽生えてくるものだ。あと１年あったら…多分、もっと気心知れた仲になったのかな？…と、自分なりには思ったものだ。いい事も悪い事も、一緒にする事で心の壁を越えられたように思う…

実習時間ともなると、ストーブを囲んで皆でタバコ一本を回し吸い…臭いを隠す為に靴の裏ゴムをストーブに押し付け、焦げた臭いで誤魔化したり…或るときは全校集会に出るのがダルイと、皆でソボタージュ…この位の人数ならバレないだろうと、校舎の外に出て日向ぼっこ…余裕で教室に戻ると、しっかりバレていて、げんこつを食らう羽目に…思い出すとキリが無い。勿論、げんこつを落としたのは、3年間担任だった恩師。でも、不思議と恩師に叱られたり、叩かれた事に何の不満も無く、むしろそうしなかったら、その事に不満を抱いたかも知れない…多分、みんなそう思っていたのではないだろうか。やってはならない事をやっている、だから、ルールを守らなかった自分達には、当然の制裁なのだと言う潔さがあったように思う。

だからだろうか？…息子の高校の卒業式に行った時には、凄くショッキングだった。式が終わり、それぞれ教室に戻って、担任から最後の言葉が生徒に向けて発せられてるその時に、勝手に立って歩き回ってる者、後ろを向いてお喋りしている者、そしてそれを叱らない（叱れない）先生…教室の後ろには、ずらりと保護者が並んでいると言うのに…私には、異様な光景にしか思えなかった…これが今の教育の現場なんだろう、何故か腹が立ってきてしょうがなかった。
この子達は何れ社会に出て、この荒波に揉まれていったい何を思うのだろうか？…そう思った時、逆にこの子達の将来を思い、可哀相とさえ思えてきた。全ては親達のエゴが作り出した、悲しい現実なのかも知れない…

先生は叱り、生徒は叱られる。そんな当たり前の光景がこの時代から消え去って行くのだろうか？…
師と仰ぐ存在が無いとは…何とも淋しい限りだ。

時を経て、恩師と再び再会したのは、もうかれこれ１０年近くになるだろうか…札幌の高校に勤務していた恩師から、車の事で連絡があり再会したのである。昔とちっとも変わらない喋り口調に、ついこの前卒業したばかりと錯覚さえしてしまう程、一気に空白の時を埋めたのを記憶している。それ以来、現在に至るまで事有る事に恩師には御世話になり続けている…時折、このご時世を憂いては、心配してくれるその心遣いにいつも感謝の念を抱きつつ…